琵琶湖の釣りを楽しむ!


琵琶湖のホンモロコ釣り・ビワマス釣り・カヤックフィッシングなど、この欄では、長らく本誌で紹介してきた内容のエッセンスをお届けしていきます!


懐かしい“南湖のホンモロコ釣り”が帰ってきた!

琵琶湖の南湖でホンモロコが釣れ出しました
二人の背後に見えているのは「びわこ大津プリンスホテル」と「琵琶湖文化館」他。この日は生憎の雨だったが、藤本名人(右)と中2男子がダブルヒット!(令和5年撮影) 

ホンモロコが再び南湖で釣れ出しました!

 令和6年、春。琵琶湖の春を彩るホンモロコ釣りは、多分、新しい時代を迎えることでしょう(3月中旬現在の予想です)。なぜなら、昨年はついに長年の沈黙を破り南湖全域でホンモロコが産卵しまくる姿を確認できたからです。ここ10年は北湖東岸の有名2河川にずっと釣り人が集中していましたが、昭和の時代のホンモロコ釣りは琵琶湖・南湖がメジャーフィールドで大人気だったのです。足場のよいファミリーフィッシング向けのポイントが昔々よりむしろ増えている現在の南湖で、再びホンモロコ釣りが楽しめる、夢のような状況が訪れつつあります。

 

 一昨年は5月からがメインでしたが、昨年の場合、3月下旬には南湖で釣果が見られました。昨年の釣果が本格化したのは4月初旬からで、それから1月後の5月初旬でも、南湖の東岸西岸を問わず全域で、丸葉柳の根っこや葦原、石垣などに群れでズリ上がっては産卵しまくるという、伝説になりかかっていた感動の光景が繰り広げられました。絶滅が心配されていたホンモロコ ですが、往年の名ポイントで再び幻だった魚が釣れるという嬉しい状況が、ついに復活しました。

 

 子供の頃に浜大津などの岸辺で、父親やおじいちゃんとノベ竿でホンモロコ釣りを楽しんだという記憶を持つ方は非常に多いと思います。頬に琵琶湖の春の少し湿った風を受けながら、のんびりとウキを眺めてモロコを狙うのは、簡単な言葉では表現できないほどの感動を呼び覚ましてくれます。そんな風流な釣りはもう楽しめないかとあきらめていた方も多いのでは?

 

 機会があれば新しい時代のホンモロコ釣りに、ぜひ挑戦してみてはいかがでしょう。琵琶湖がもっと好きになるきっかけとなるかもしれません。気軽な釣りなので観光とセットにしたり、ついでに滋賀の美味しいお店で食事をしたり、残念ながら釣れなければ地元の湖魚販売店や道の駅などで、琵琶湖の魚の加工品をおみやげとして購入することもできます。家族と琵琶湖に出かければ、一生の楽しい思い出となること請け合いです。

 

琵琶湖周辺でホンモロコ釣りを楽しむ方へお願い

◉『遊漁の手帖』という小さな冊子は滋賀県農政水産部水産課が毎年発行し、琵琶湖近隣の釣具店等で無料配布されています。琵琶湖で釣りをする上での禁止事項等が記載されていますので、ホンモロコについて解説されている箇所を、ぜひチェックしてみてください。ネットで同内容を閲覧できる便利な時代になりましたが、ぜひ実物の冊子を入手して、車や釣りカバンに常備しておくとよいでしょう。

 

◉琵琶湖の漁師さんをはじめ、地元農家の方々や琵琶湖周辺に暮らす方々の日常生活の邪魔にならないで済む駐車場所を選択することが、非常に重要です。可能なら「駐車場」になるべく車を止めるようにしましょう。

 

◉地元の方が静かに暮らすエリアで釣りをさせてもらう場合は特に、駐車場所はもちろん早朝や夜間に大きな音をたてない配慮も絶対に必要です。

 

◉ホンモロコは回遊する魚なので、ポイントはゆずりあっても十分に釣れることが多いです。大らかに楽しみましょう!

 

◉浜大津周辺は昔からコアユ釣りを愛好する方も多く、またルアー釣りを楽しむ方もたくさんいます。お互いが楽しい思い出になるよう心がけましょう。また散歩やランニングなど、多くの方々の憩いの場になっています。竿を振る前には必ず後方を目視して、安全確認をするよう心がけましょう。

 

◉産卵しにきた魚を狙う釣りなので、今しばらくは、匹数に関しては節度をもって楽しみたいものです。

 

◉釣りゴミや弁当のゴミ、タバコの吸い殻などは各自で持ち帰りましょう。余ったエサのアカムシは再利用すべく持ち帰り冷蔵庫で保管するか、水に放さず自分で処分しましょう。

 

※ 琵琶湖で釣りを楽しむ全ての人が “来たときよりも美しく”の気持ちを持っていれば、我々の孫の代まで末長く釣りを楽しんでいけることでしょう。使い古された標語ではありますが、今だからこそ “来たときよりも美しく“ の精神で行こうではありませんか !!

ホンモロコ釣り入門

岸辺に生える丸葉柳の木の根っこの側で、静かにウキ釣りをする。ハエウキを使用する繊細な仕掛けなら、より水中からの情報を得られる。昔ながらの唐辛子ウキでやるのも風情があって楽しい
岸辺に生える丸葉柳の木の根っこの側で、静かにウキ釣りをする。ハエウキを使用する繊細な仕掛けなら、より水中からの情報を得られる。昔ながらの唐辛子ウキでやるのも風情があって楽しい

 

※群れに当たりさえすれば、比較的簡単に釣れる魚です。柔らかめのバス・トラウト・メバルタックル等があれば、それらを流用して狙えます。ただ群れが岸辺に寄っているのなら、シンプルなノベ竿のウキ釣りで狙うと、往年のホンモロコ釣りの雰囲気をより味わえます。ノベ竿のホンモロコ釣りの世界観は、ぜひ体験してみることをオススメしたいです。南湖周辺では特に、足元まわりを丁寧に釣った方がよいことが多く、ノベ竿が有利になる場面が多いといえます。

 

◆ホンモロコのウキ釣りについて
 針の数は1本の、シンプルなノベ竿のウキ釣りで狙えます。とりあえず挑戦するなら、4.5m〜3.6mくらいの入門用の安価な清流・渓流竿かフナ竿で十分。水門周りで足元を釣るなら六尺(約1.8m)以下の竿もあると、取り回しがよく使いやすいでしょう。慣れてくると道糸を細くし針は段違いの2本仕様にし、ウキも軽量素材のハエウキにして長めで軽量のハエ竿を使用するという、本格的なウキ釣りにも挑戦したいところです。小さなアタリも出るので水中の情報量が増え、やはり釣果が全く違ってきます。足元がある程度深い水門周りなら、本格的なタナゴタックルで足元を繊細に狙うというのも、ものすごく面白いですよ!

 

   エサについては、とりあえずアカムシ(赤虫)に勝るものはありません。一時は購入できるお店が減っていましたが、近年に至りアカムシやホンモロコ釣り用の仕掛けは、琵琶湖周辺や京都の釣具店(特に該当エリアの小誌の取扱店に行けば専用品が簡単に入手できるようになっています。

 

 仕掛けについてはとりあえず、竿の長さに合わせた市販のハエもしくは川用・池用のウキ釣り仕掛けセットがあればOKです。時間に余裕があるなら久しぶりに、釣行前に仕掛けを自作してみるのも楽しいですよ!

 

 予備の針についてはホンモロコ用・袖・秋田狐等の2.5号前後のハリス付きを準備しておけばよいでしょう。

 

※活性の高い群れに当たれば簡単に釣れる魚ですが、そう簡単にはいかないのが魚釣り。日によっては周りばっかり釣れて自分には釣れないということもあります。まずはエサをただよわせるタナが、状況に合っているかが重要です。ホンモロコ釣りといえばベタ底を狙うのが長らくの定石でしたが、藤本名人の最新理論では、中層も狙う価値があることが判明してきています小誌11号必見!)。まずは「底取り」(タナ取り)と呼ばれる基本動作を行い、そのポイントの水深に合わせ、ウキが丁度よい状態で立つように調整します。まずはベタ底付近から狙っていき、しばらくやってダメならウキ下を少しずつ短く調整しタナを上げ、様子を見ましょう。

 

 

◆ホンモロコの投げ釣りについて

 道糸(もしくはリーダー)の先端に市販の5本針程度の投げ釣りモロコ専用仕掛けもしくはワカサギ仕掛け等を繋ぎ、仕掛けの末端に2号前後のナス型オモリを付け、軽く投げて底を取り、糸を張って竿受けに竿を置いて竿先に出るアタリを待つという、ライトなブッコミ釣りです。道糸はフロロの5ポンドがアタリが出やすく、他にもいろんな意味でベスト(荒川師匠の教えです)。ナイロンならもう少し太めにし、オモリも重めにすると糸の張りが強くなりアタリが出やすくなります。

 ベテラン向けですが、メバルやアジ用の本格的なタックル(道糸は0.3〜0.4号程度のPEライン+フロロ5lbのリーダーを1ヒロ)でやると、別世界が広がります。

 

※琵琶湖は荒れると強風が吹きます。その日の状況に合わせてオモリの重さやウキのタイプ、道糸の素材や太さ、針のタイプや大きさを変えたりしてタックルバランスを調整するとよいでしょう。じゃまくさがらずにマメに釣りやすさを追求すると、やはり釣果は伸びます。

 

 

南湖でホンモロコが釣れ出しました
ホンモロコの投げ釣りは、こんな感じ。琵琶湖と繋がる内湖(ないこ)の足場のよい岸辺でも楽しめる

南湖のホンモロコ釣り− 補足

琵琶湖、南湖での釣果! ホンモロコがたくさん釣れた
琵琶湖、南湖での釣果! ホンモロコがたくさん釣れた

 

 「ホンモロコ」は長らく地元の滋賀やお隣の京都をはじめ、関西一円の多くの釣り人に愛された特別な魚です。昭和の時代には琵琶湖の春の風物詩として、“春のホンモロコ釣り”は大人気でした。中でも浅場が多く足場のよい南湖のホンモロコ釣りは、多くの人々のよき思い出となってきました。

 

 春の訪れと共に、沖合から水面が盛り上がるほどの群れで産卵をしに接岸してきたというホンモロコ ですが、人間の営みの犠牲になり今から28年ほど前から急激に数を減らし、20年ほど前には、ついに絶滅が心配されるほどまでになっていました。

 

 小誌創刊の準備を進めていた2010年〜2011年頃、京都の釣具店(上州屋京都右京店さん)等に掲げられていた釣具店のポップで、北湖東岸でホンモロコが再びひっそりと釣れ出したことを知りました。「自分が生きている間は無理かもしれない」と勝手に思い込んでいましたが、その後、小誌はホンモロコの残り香を追い続けてきました。

 

 この10年、毎年春がどれだけ楽しみであったか……。小誌創刊準備号からずっと登場頂いている荒川師匠・昭和9年生まれの杉田さん・そして藤本名人(フィッシングエイトさんにお勤め)とその御友人、釣具店の店員さんなど、たくさんの方々に協力いただきながら毎春ホンモロコを追っていく内に、いろいろと嬉しい出来事が続いていきました。

 

 琵琶湖の北湖では一足先にあらゆるエリアで再び釣果が見られ出していましたが、並行して行っていた南湖での調査は、何年も結果が出ませんでした。しかしついに2019年、藤本名人が懐かしの南湖でホンモロコを釣り上げました。それからの3年間に、何が起きたのか? 信じられないほど嬉しい光景を目撃し続けることができました。一昨年(2022年)には南湖西岸での産卵シーンの撮影に成功小誌12号をぜひ御覧ください)、ついに昨年(2023年)には南湖全域で大量のホンモロコが、足元で人目をはばからず産卵しまくるという、創刊当時からすると夢のような光景を目撃することができました。

 

 復活劇の裏には人間による大掛かりな放流の効果もあったかもしれませんが、近年の研究で放流はあまり効果がない可能性があることが発表されています。小誌に連載頂いている元琵琶湖博物館総括学芸員の桑原先生に教えて頂いたことですが、自然にそって行動する野生魚が自然産卵することが非常に重要なのだそうです。ホンモロコを例にすると冬期は琵琶湖の深部に潜り春に浅瀬に乗っ込んで柳の根っこ、葦や石垣に産卵するという、生来の行動パターンをとることのできる野生の個体がいなければ、種としての本質的な増加は難しいそうなのです。ホンモロコは本来かなり丈夫でたくましい魚だったこともあり、減少の主要原因であった水位の急激な減少等が改善しつつあることでキッカケをつかむことができたのでしょう(本来の量まではまだまだですが……)

 

 難しいことは抜きにして、懐かしい南湖でのホンモロコ釣りが帰ってくる可能性は、もはや目前です。とにかく昨年の南湖の岸辺は、もうびっくりするくらい卵を産み付けていましたので……。5月中旬頃にはホンモロコの仔魚(しぎょ=魚の赤ちゃん)が、エゲツないくらい泳いでいました。ですので、もうそろそろ、家族が喜ぶ分くらいは釣って楽しんでもいいのではないかと思っています。

 

 昔々、なぜホンモロコ釣りが大人気だったかというと、それは “すごく美味しい魚” だから。ただし、現在ネット上に流布している「素焼き」等の調理方法は、実際には、なかなか難しいので注意が必要です小誌07号をぜひ御覧ください。正しく調理されたホンモロコは名声にたがわぬポテンシャルなので御安心ください)。シシャモでもワカサギでもない、噛めば噛むほど香ばしい、大変な美味しさの魚が大量に接岸するのを、関西の釣り人が見逃すはずはなかったわけです。

 

 今年はぜひ、ホンモロコ釣りに挑戦してみてはいかがでしょう?

 

                           [文責/北原(ウォルトン舎)]

南湖でホンモロコが釣れ出しました!
南湖東岸の小さな水門まわりにて、手すり越しのウキ釣りで釣れたホンモロコ 。荒川師匠(右)は短めのスピニングタックルで少しだけ投げるウキ釣りスタイルで。水門周りでは、タナゴタックルで狙うのも楽しい
素焼きは、実際にはなかなか難しい(小誌07号をぜひ御覧ください!)
素焼きは、実際にはなかなか難しい(小誌07号をぜひ御覧ください!)