琵琶湖のコアユが心配です

 みなさま、お疲れさまです。御無沙汰してしまい大変申し訳ありません。次号の冒頭に掲載するつもりだった内容が出版が遅れてしまい無意味になりそうですので、差し替えることにしました、とりあえずこちらで発表させてもらいます(次号、爆裂編集中です!)。

                       

  

 ここ数年。春のホンモロコについては、感動を通り越してあきれるくらいの大復活を目撃することができ心底嬉んでいます。平成16年(2004)頃には、絶滅が心配されていたのですから……。しかしその一方で、ちょっと前まであれだけ泳いでいたはずの琵琶湖のコアユ(小鮎)の姿が急激に少なくなっている現状に対して、大きな違和感が拭えません。


 春から秋にかけて、北湖も南湖も琵琶湖とつながっている田んぼの用水路にも、ちょっと前までは、どこかしこにウジャウジャと泳いでいたコアユ。北湖の竹生島に明け方から飛び立った鵜が何時間も途切れないほど増加していたとき(平成16年頃)でも、バスも今よりずっと多かったにもかかわらず、それらのえげつない捕食圧にびくともしないほどたくさん泳いでいたものです。まるで豊かな海域のイワシのような存在でした。春産卵のホンモロコと違い、秋に浜辺の小さな流れ込みでも卵を産める習性から、琵琶湖の魚を減少させる大きな原因の一つとなっている “初夏頃の人為的な水位調整の影響” はあまり受けていないのではと言われていました。それではなぜ、たった数年でここまで急激に個体数が減ってしまったのか?  ここ数年の減少具合は気持ち悪いを通り越していて、もはや黙って知らないふりなどできないレベルです。


 自分なりに見聞きしたコアユ減少要因の仮説は、次の通り。研究機関やメディアからの情報だけではなく熱心な釣人の水辺観察からの推察で科学的根拠が無いものも含みますが、紹介させてもらいます。【大きな外来植物性プランクトンの急激な増加に伴い在来の小さな植物性プランクトンが減少し、それらが主食の動物性プランクトンに影響が出て激減。減ってしまった動物性プランクトンはコアユの稚魚の主食なので悪影響が出た/ネオニコチノイド系農薬の影響では?/水溶性除草剤の規制があまりにゆるく、周辺の水路や河川を経由して大量に琵琶湖に流入し結果的に植物性プランクトンに悪影響が出ている/浄水場の排水の影響なのか、浄水場周辺では大人のコアユの餌となる藻類が激減している/大量増加中のワカサギの影響では?……etc.】。どれも正直、かなり怪しい。ただ、信頼できる専門家の方々にも直接意見を伺った結果、とにかく大事なのは冷静になること。コアユ減少の原因は、まだ科学的に特定されてはいないそうです。


 もしかしたら、最近報道されているようにコアユ減少の主要原因は気象変化なのか?  ここ数年、猛暑日・真夏日が以前よりずっと長く続いています。コアユにとって重要な産卵場所である浜辺の水温が、例年なら産卵が本格化し始めていた9月下旬以降になっても一向に下がらず多大な悪影響が出ている可能性は、あるかもしれないと思います。

 

 そういえば昨年の9月初旬に琵琶湖で泳ぎました。例年コアユが産卵しまくるその浜は、以前なら一番気温が高い8月でも湖中に入ると湧水や小さな流れ込みの影響で水が冷たく心臓が止まるくらいだったのに、その日はまるでぬるま湯で、衝撃を受けたのでした。本来ならコアユの産卵がボチボチ始まり出すタイミングなのに浅瀬はぬるま湯……。


 琵琶湖の豊かさの象徴であるコアユ。以前のようにたくさん泳いでいる琵琶湖にすんなりと戻ってくれることを、切に切に願う今日この頃です。

 

                                 編集発行人 北原一平